趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第69話】阿仁鉱山稲荷坑の氷長石

「楽石庵閑話」~【第69話】阿仁鉱山稲荷坑の氷長石

荒川鉱山の紫水晶に続き、北鹿を代表する浅熱水性鉱脈鉱床の一つ阿仁鉱山の氷長石を紹介する。氷長石はカリ分を主体とするアルカリ長石の一種で、浅熱水性鉱脈の脈石として特に金銀鉱脈から屡々産するとされる。

阿仁鉱山は、江戸時代には三大銅山の一つとして産銅量一位となった歴史を持ち、阿仁六ヶ山鉱山(鉱脈群)の集合であるが、戦後は金山として再開しその後再び銅山として稼行された。しかし鉱脈の枯渇が進み昭和45年には採掘を中止し、阿仁探鉱所として探鉱に専念し稲荷坑下部で14号の富鉱部を捕捉して、昭和48年から本格的採掘を開始し昭和53年に閉山している。稲荷坑を含む本坑地区は、石英安山岩・流紋岩等に覆われた中新世台島階の引割層の堆積岩類とそれを貫く玄武岩類からなり、鉱脈は広範囲に渡って分布している。稲荷坑では、黄銅鉱等の硫化鉱物に伴い氷長石を産したことで有名で、その特徴ある産状を紹介する。

(1)稲荷坑寿脈産黄銅鉱

本標本は、氷長石の細かい結晶と水晶に覆われた黄銅鉱結晶の大型標本である。

(2)稲荷坑大黒脈産方鉛鉱と閃亜鉛鉱

変朽安山岩中の氷長石を伴う晶洞で、方鉛鉱・閃亜鉛鉱と特徴ある氷長石結晶の産状が良く分かる。

(3)稲荷坑大黒脈産方鉛鉱・鼈甲鉛鉱と黄銅鉱

母岩中の脈石としての氷長石脈の産状が良く分かり、閃亜鉛鉱は典型的な鼈甲亜鉛鉱である。

(4)稲荷坑大黒脈産針銀鉱

一部輝銅鉱化した黄銅鉱に伴い、微細な針銀鉱(と思われる)針状結晶がみられる。本鉱山は金銀鉱でも知られているがその標本は未見で、もしこれが銀鉱物なら希少な標本と云える。

昭和40年代初めには、既に多くの切羽が入坑不可の状態で見るべき標本も採集出来ない状態であった。現在でも市場では本鉱山産の立派な標本をみかけるが、やはり氷長石を伴うものが望ましいと思っている。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加