趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第20話】ニッケル鉱

「楽石庵閑話」~【第20話】ニッケル鉱

ニッケルは極めて重要な金属材料で、日常使用されるニッケル含有合金は約3,000種、量的には圧倒的にステンレス鋼向けが多い。国内のニッケル鉱山は前回のコバルトよりは多く、北海道の日高帯や中央構造線沿いの超苦鉄質岩に伴って産出する。無論大規模な鉱床はなく、橄欖岩や蛇紋岩が風化した含ニッケル残留土が戦時中各地で採掘されていた。数千トン単位で採掘されたと云われるのが、中央構造線沿いの宮川(長野)・浦川(静岡)、それに製錬所もあった最大規模の大江山鉱山(京都府)である。また夏梅鉱山は有名な紅砒ニッケル鉱の団塊を産し、鉱物マニアにとって人気の産地であった。

大江山鉱山:大江山超塩基性岩体のニッケルを微量含む蛇紋岩の風化により、二次的に生成した含Ni粘土類が分布し露天掘りしていた。写真は日本冶金大江製造所で処理されていたNi原鉱で、大江山鉱山産の紅土(ラテライトNi:0.4~0.7%)と試験処理されていた夏梅鉱山産上鉱(Ni:2.4%)である。

宮川鉱山産の珪ニッケル鉱(左)で、御荷鉾緑色岩類が中央構造線に沿って分布しそれらの風化表土の含Ni赭土を露天掘りしていた。また浦川鉱山(右)は赤石山脈南端部で、三波川変成帯の泥質片岩の片理に沿って迸入した蛇紋岩を源岩とする含Niスメクタイト系粘土で、含Ni苦灰石もみられた。

夏梅鉱山:関宮超苦鉄質岩体中の鉄-ニッケル鉱床で、原岩の斜方輝石橄欖岩の蛇紋岩化に伴ってNiが濃集し、断層粘土層中より特徴的な団塊状Ni鉱を産出した。切断面では暗鼠色の硫砒ニッケル鉱と、銅赤色の紅砒ニッケル鉱との同心円状の累帯構造をみることができる。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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