趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第2話】佐渡鉱山産のヘッス鉱

「楽石庵閑話」~【第2話】佐渡鉱山産のヘッス鉱

我国で一番著名な鉱山と云えば、まず佐渡鉱山であろう。江戸時代から莫大な金銀を産出し、松本清張の時代小説「無宿人別帳」「山師」「佐渡流人行」は何度読んでも飽きない。

しかし金銀鉱山としての命脈は1952年の大幅縮小により実質的には終わり、残鉱処理で含金珪酸鉱を直島精錬所に送っていたが、1989年についに閉山している。従って本鉱山産の鉱物標本類には中々お目にかかれず、市場では1937年頃相川海岸での機械化採掘で得られた浜石(円礫状の古い鉱石)の、碁石のような含金礫が昔並んだ位である。

ところが昨年、本鉱山産Hessiteが標本店に出され、運良く入手できたのである。この鉱物、鉱物記載はあまり行わない鉱山地質誌が「佐渡鉱山産へッス鉱」(豊遙秋 1970年)として掲載したシロモノで、切羽のごく狭い範囲からのみ産出したとされる。石英中に黒色ヘッス鉱と褐鉄鉱のヤケ、被膜状の角銀鉱がみられ、文献記載の通りの外観である。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加