趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第47話】優量鉱山の輝安銅鉱

「楽石庵閑話」~【第47話】優量鉱山の輝安銅鉱

第1話で愛媛県銚子滝鉱山産輝安鉱のついでに触れた優量鉱山の輝安銅鉱、昔々陶石調査の折に廃坑跡に一寸立ち寄ったが、優量鉱山跡はズリが埋められて採集不可能で念願の輝安銅鉱は夢と消えた。

ところが「待てば甘露の日和あり」で、昨年馴染みの店で偶然出会う事となった。関西の老舗標本屋から出たとされる優量鉱山産安四面銅鉱標本は、緻密な含銅硫化鉱中の四面銅鉱脈で明らかに安四面銅鉱の結晶群だが、その中に外観・形状の異なる結晶が認められた。これを新年会講演で来名されたM博士に肉眼鑑定をお願いしたところ、外観上の違いとして下記2点を確認して頂いた。

①輝安銅鉱の劈開は[010]方向に完全で、一方安四面銅鉱には劈開がない。

②輝安銅鉱の晶癖は[010]方向に稍々扁平な柱状で、一方安四面銅鉱は四面体で異なる。

この結果、問題の鉱物の破面には明瞭な劈開が認められ、四面銅鉱の結晶とは明らかに異なる柱状結晶と判断され、少なくとも安四面銅鉱ではないとのご判断であった。まあ素人収集家にとってはこれで十分、産状も文献通りで、国産稀産鉱物(原色鉱石図鑑掲載の写真以外、実物をみた方は殆どいない)でもトップクラスの輝安銅鉱標本として日々眺め悦に入っている。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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