趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第3話】地質学会大物推薦の大正(小野)鉱山

「楽石庵閑話」~【第3話】地質学会大物推薦の大正(小野)鉱山

本鉱山は「日本鉱産誌Ⅰ-b」に銅鉱山として記載された一般には無名な鉱山だが、地質学会の大御所故小林貞一博士が「日本地方地質誌中国地方」で本鉱山に触れているのである。博士は日本列島の構造と成り立ちを造山運動で説明する研究を主導され、地方地質誌の総論・四国地方・中国地方を執筆された。特に中国地方は「恩師小沢儀明先生に捧げる」と記された労作で、同書の第6章 長門の地質でジュラ紀層の化石群につき述べられ、末尾で本鉱山についての記述がある(どう云う文脈の都合なのか理解不能)。

その部分を抜粋すると、「四王司山北麓河内越北方には主として石英長石からなるペグマタイトがあって・・・その西方勝山村小野の大正鉱山の銅鉱は、硯石統の礫岩・粘板岩中に石英玢岩床が貫入して生じた鉱床で、黄銅鉱と孔雀石を産する」と詳細に述べられている。

筆者も大昔、この辺りでジュラ紀の化石を探し歩いた記憶があるが、こんな小鉱山の痕跡等は見つかるはずもなくすっかり忘れていた。ところが数年前、偶然某標本店のHPでこれを見つけ、何か因縁を感じて購入した標本なのである。暗緑色の弱変成を受けたと思われる堆積岩中に、二次鉱物を伴う黄銅鉱脈が入っており、小林博士に相応しい「古色蒼然」と云った趣ある外観を呈する。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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