趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第17話】浜横川鉱山の鉱床研究

「楽石庵閑話」~【第17話】浜横川鉱山の鉱床研究

長野県は意外に金属鉱山の少ない地域で、有名な甲武信・浜横川鉱山の他は磁鉄鉱の大日向、クロムの大日、褐鉄鉱の諏訪、アンチモンの戸沢鉱山や、近年稀産鉱物でマニアに知られる金鶏・向谷鉱山くらいであろうか。

浜横川鉱山は古くから層状マンガン鉱床として著名で、地調月報 Vol.1 No.4(1950)記載の浜横川鉱山マジガン鉱床調査報告では、古生層中の熱水性交代鉱床として説明されている。しかしその後のプレートテクトニクス理論や微化石層序研究の発展で、古生層で塗りつぶされた地域が主にジュラ紀付加体と認識されるようになり、各地に多数分布する層状マンガン鉱床の生成過程も同生説で根本的に見直されている。

さて数日前に五味篤氏(鉱山地質科卒業後、大手鉱山会社に長年奉職され定年退職後も鉱物資源開発業務に携わっておみえ)より、「新知見に基づく長野県辰野町浜横川鉱山の地質と鉱床」(伊那谷自然史論集22 2021)をお送り頂いたのである。同氏は1970年代まだ稼行中の山元調査を再三にわたり実施され、詳細な坑内調査に基づく地質構造と熱変成作用による鉱物の帯状分布の研究成果は貴重な資料である。吉村豊文著「日本のマンガン鉱床」以来多くの関連研究報告が出されているが、関心をお持ちの方には是非お読み頂きたい文献である。

ついでに同鉱山産の鉱物標本を幾つか紹介しよう。

*本寄稿は科学技術論文の著者「五味篤氏」のご厚意により許諾を得て掲載しています。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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