「楽石庵閑話」~【第13話】黄鉱と黒鉱鉱石
今回は鉱床本体の黄鉱及び(狭義の)黒鉱鉱石を紹介しよう。黒鉱鉱床で下部から黄鉱帯→黒鉱帯を形成する過程は、金属元素の溶解度の温度依存性によるとされ、低→高→低温 と変化した熱水系により生成した。硫化鉱物の大部分は前半の低温→高温期に生成したと考えられ、黄鉱はこれら硫化鉱物を交代して出来たとしている。
第Ⅰ期:低乃至中温(100~250℃)の鉱化溶液が海底面に噴出し、冷海水との混合により細粒の閃亜鉛鉱・方鉛鉱・黄鉄鉱・四面銅鉱・重晶石・石英からなる初成的な黒鉱(=プロト黒鉱)を海底面に沈澱。
第Ⅱ期:”プロト黒鉱”の集積が進むにつれ、鉱体下部は200~300℃の鉱化溶液により熱せられて反応し再融解・再結晶して粗粒化した。海底面に噴出した溶液は、同時にプロト黒鉱を上部に形成。
第Ⅲ期:高温(300~350℃)のCuに富む鉱液の侵入で、Ⅰ・Ⅱ期生成硫化物は下部より交代され黄鉱に変化。
第Ⅳ期:少量の閃亜鉛鉱・方鉛鉱・黄鉄鉱・四面銅鉱を300~150℃で生成。
また噴出する熱水の温度低下で300℃を境にして沈澱する成分が変化し、下部にまず銅が沈澱して黄鉱を形成し、300℃以下でなお溶解度を持つ亜鉛・鉛と云った黒鉱質の鉱石を上部に沈殿させる・・・と云うモデルも提案されている。
【寄稿】坂本憲仁(BS45)