趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第52話】河山鉱山のヒシンゲル石

「楽石庵閑話」~【第52話】河山鉱山のヒシンゲル石

日本鉱業協会発行の日本の鉱床総覧は、古本でも結構な値の付く便利な資料である。この上巻キースラガー部には、九州地区に続き最後に河山から柵原鉱山迄6鉱山が加えられており、まだ別子型鉱床の成因が十分に解明されていなかった当時の鉱床分類では、所属が曖昧とされていたのだろう。

さて河山鉱山は、河山型とも呼ばれた三郡変成帯上部千枚岩帯の石灰岩との高温交代鉱床とされ、スカルン鉱物も伴う含銅磁硫鉄鉱鉱床であった。学生時代に、鉱床母岩の変質とそれに伴う粘土鉱物の研究をしていた鉱山地質科のI先輩から、「河山鉱山のヒシンゲル石が・・・」てな話を聞き、山口県を回った際に一寸立ち寄り、磁硫鉄鉱の標本(一二枚目写真)を一つ頂戴したが、ヒシンゲル石を眼にすることは出来なかった。

それから半世紀、某標本店HPに河山鉱山産ヒシンゲル石が出品され即購入した。同鉱物は鉱化の最末期にヒシンゲル石-黄鉄鉱-石英-方解石の細脈を成すと文献にはあるが、入手標本は経時変化によりバラバラに崩壊した焦茶色縞状小塊(三~五枚目)で、見栄えのする鉱物でない。

1.磁硫鉄鉱

本標本は含銅磁硫鉄鉱の典型的な鉱石で独特の色調を呈する。

2.ヒシンゲル石

ヒシンゲル石は、アロフェングループの水和アルミニウム珪酸塩とされ、赤金鉱山等様々な鉄鉱床からみつかっている。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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