「楽石庵閑話」~【第24話】自然硫黄
日本には活火山が多く,火口付近に昇華物として露出する自然硫黄を露天掘りする硫黄鉱山が多数あった。その代表が八幡平の松尾鉱山で東洋一といわれ、今も残る鉄筋コンクリート社宅廃墟群は当時「雲上の楽園」と称された。現在は回収硫黄の普及で資源的価値はないが、今回紹介する自然硫黄は硫化鉱鉱床内から産出する事例で、河津鉱山のように坑内から大量の温泉水が湧出する事例は別として、南薩型金鉱床の赤石鉱山と銅藍で有名な増冨鉱山が有名である。両者とも粗鬆質の石英中に銅藍を伴う共通性があり、特殊な鉱化条件下で自然硫黄を生成したと考えられる。最近、尾去沢鉱山産自然硫黄を入手したが、硫酸鉛鉱化したガサガサの方鉛鉱脈中にコーク石を伴うもので、高い硫黄分圧の酸性熱水で鉱脈の溶脱と硫酸塩鉱物生成後に、火山性昇華物として自然硫黄が付いたと推定される興味深い産状であろう。産出名は不明だが、s40年代半ばまで稼行され、上部に酸化帯が残っていた昭和産ではと思っている。かつて石切沢通洞前には硫酸鉛鉱化した芋状方鉛鉱が貯鉱してあったが自山で処理できず、細倉鉱山へ製錬を依頼したと伝わっている。
【赤石鉱山(鹿児島県)】
【増冨鉱山(山梨県)】
【尾去沢鉱山(秋田県)】
【尾去沢鉱山産芋状方鉛鉱(断面には未変質の方鉛鉱が残っている)】
【寄稿】坂本憲仁(BS45)