趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第50話】別子鉱石中の結晶

「楽石庵閑話」~【第50話】別子鉱石中の結晶

含銅硫化鉄鉱と通称される別子型鉱床の鉱石は、強い動力変成を受けて鉱脈鉱床に屡々みられる晶洞が殆どなく、愛想のない塊状鉱で鉱物マニアの人気は低い(一二枚目写真)。例外が塊状鉱の割目に稀に見られる四面銅鉱や黄銅鉱の結晶(ネットでは輝安鉱も産出したようだ)で、独特の外観を呈する。これを産した別子鉱山筏津坑は、本山鉱床より規模は小さいものの戦後も本山と並ぶ出鉱量を維持したとされ、銅山川一帯の別子鉱床群と西赤石山下を貫く探鉱坑道から第四通洞を経て、端出場の手選鉱場へ鉱石が送られていた。筏津坑特産の超稀産鉱物水銀四面銅鉱の入手はまず不可能だが、安四面銅鉱は住鉱中研に勤められたH氏の採集品とされる古典標本を幸いにもある機会に入手できた。

1、含銅硫化鉄鉱鉱石

山元では別子特有の面白い名称で鉱石を色々と呼んでいたが、緻密な塊状鉱には磁鉄鉱の黒色褶曲模様がみられることがあり(一枚目)、ときに菱マンガン鉱(淡桃色部)・石英及び磁鉄鉱が縞状を成していた(二枚目)。

2、安四面銅鉱

四面銅鉱は含銅硫化鉄鉱の塊状鉱を切る割目から黄銅鉱と共に特徴的な結晶形で産し、恐らく第三紀火成活動に伴う後期鉱化作用の産物と考えられている。

3、黄銅鉱

四面銅鉱は無論、黄銅鉱の結晶標本も選鉱場でみつけることは困難で、本標本は京都の老舗標本店が最近放出したものである。別子産の黄銅鉱結晶は、一般的な浅熱水鉱脈の晶洞産とは一味違う雰囲気を持ち、鉱石右側(二枚目;青味)と右側(三枚目:赤味)で色調が異なり、結晶表面に何らかの違いがあるのだろう。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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