趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第42話】輝安鉱

「楽石庵閑話」~【第42話】輝安鉱

アンチモンの鉱石である輝安鉱と云えば、世界の銘柄標本である市ノ川鉱山産の見事な結晶をすぐ思い浮かべる。アンチモンは難燃剤等の添加材や合金として使用されるが、国内では輝安鉱の産地として300余が記載され、色々な鉱床からの産出が知られ、国内アンチモン鉱床は下記3タイプに分類される。(石原2012)

(1)後期白亜紀チタン鉄鉱系型:西南日本内帯において主に付加体堆積岩類、一部火成岩類を母岩として産出する輝安鉱-石英鉱脈鉱床.チタン鉄鉱系花崗岩類貫入域に特徴的に分布。(代表例:日永・戸沢・妙法)

(2)新第三紀チタン鉄鉱系型:西南日本外帯の新第三紀チタン鉄鉱系花崗岩類と岩脈類に関係して、主に付加体堆積岩類・三波川変成岩等の古期岩類や新第三紀火山岩類中に生成した輝安鉱-石英鉱脈鉱床。 (代表例:市ノ川・銚子滝・舩原)

(3)新第三紀(磁鉄鉱系)火山型:西南日本内帯の古期岩類中にスポット~脈状に新生代の火山活動が生じ、金(銀)-アンチモン-石英脈型鉱床を形成。(代表例:津具・中瀬・国徳)

それでは(1)~(3)各タイプのアンチモン鉱床産の輝安鉱を紹介しよう。


(1)後期白亜紀チタン鉄鉱系型

ジュラ紀付加体堆積物に小規模な後期白亜紀花崗岩類が貫入する環境で輝安鉱-石英鉱脈。

領家帯の伊奈川花崗岩を貫く、裂罅充填型の輝安鉱-石英 (-方解石 ) 鉱脈。

花崗岩中のペグマタイト脈に伴う裂罅を充填して輝安鉱-石英鉱脈が見られた。


(2)新第三紀チタン鉄鉱系型

三波川変成帯の黒色片岩類と市之川礫岩に発達する裂罅を満して輝安鉱鉱脈は生成。

三波川帯の層状含銅硫化鉄鉱鉱床に、後期産出の輝安鉱等Sb鉱物が脈状にみられる。

紀伊半島の四万十層群付加体中に分布し、堆積岩境界割目に発達する輝安鉱-石英鉱脈。


(3)新第三紀(磁鉄鉱系)火山型

中新世設楽層群を貫く石英粗面岩・凝灰岩中の裂罅充填浅熱水性金鉱脈で、輝安鉱に辰砂を伴うものがある。

三郡変成岩とこれを貫く安山岩及び同質火砕岩を母岩とする金銀ーSbー石英脈。本標本は輝安鉱を伴う自然金。

多数の金・銀鉱山が密集した馬上地区の黒雲母花崗岩及び黒雲母片岩中の石英脈で、自然金・輝安鉱・ベルチェ鉱等を産した。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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