趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第22話】自然銀

「楽石庵閑話」~【第22話】自然銀

戦国時代、日本は世界の産銀量の1/3を占めたと伝えられ、その多くを産した石見銀山の名は世界に知られた。しかし江戸時代初期には既に鉱脈は衰え、替わって佐渡・院内・半田銀山等が相次いで開発され隆盛を極めた。

現在では銀の世界生産量の多くは鉛,亜鉛或いは銅鉱床からの副産物として生産され、豊羽・神岡・対州鉱山では含銀方鉛鉱として採掘されていた。また銅鉱床の露頭部地下に二次富化帯が形成されていると、自然銅等と共に自然銀も産し、小坂鉱山は1861年発見当初、元山鉱床露頭の風化した土鉱を銀鉱として稼行した。

銀鉱石は国内では、通常銀黒と呼ばれる輝銀鉱等の銀硫化物が石英脈中に濃集部した部分を採掘するが、自然銀は次に紹介するように各種鉱床の様々な部分にみられ、髭状・樹枝状・箔状等独特の産状をなすが、今回は著名鉱山の代表的な自然銀を紹介しよう。

【豊羽鉱山但馬】

但馬では石英質早期鉱脈の空隙に後期鉱化作用で髭状自然銀が晶出したとされ鼈甲亜鉛鉱を伴う。

【院内鉱山】

本鉱山産の自然銀は、爺髭と呼ばれ有名なもの。江戸時代を通じ本邦一の銀山として栄え、大正時代に休山した。

【清越鉱】

本鉱山はリッチな銀黒鉱石で知られ、上の樹枝状は含金量が多く変色せず、下段の普通の自然銀は黒変している。

【神岡鉱山栃洞】

この糸状自然銀は、石英・方解石や粘土等が混じった砂鉱(白ボケ変質帯)を探査課で頂戴し篩分けして得たもの。

【大和鉱山1号下部鉱】

含銅硫酸循環水により生成されたとされる空洞充填鉱床で、高品位の瀝青銅鉱と自然銅・自然銀の産出で知られた。

【串木野鉱】

北薩金銀鉱帯の代表的浅熱水性含金銀石英-方解石脈群で、石英脈の割目に箔状の自然銀が付着する。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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