「楽石庵閑話」~【第39話】明延鉱山産インジウム銅鉱
以前にも述べたが、鉱山の試験室等で切断測定された鉱石試料には面白い鉱物の含まれる可能性が高く、今回は智恵門脈産インジウム銅鉱を紹介しよう。明延産インジウム銅鉱は1968年に国内で初めて明延鉱山から記載され、その後幾つかの文献が出されており(例えば第36回鉱山地質年会学術講演要旨)、銀星脈や竜盛脈からも産出したとされる。また市場でもカケラのような含In黄銅鉱標本をみかける。
今回紹介する鉱石標本は、切断面で盤際石英脈中の黄銅鉱を綺麗に観察でき(写真④)、切断面左右の破面では黄銅鉱の色調が異なり切断面右側は赤褐色を帯びている(写真⑧)。これはインジウム銅鉱を含む黄銅鉱の特徴と伝えられる現象で(黄銅鉱のFe→In置換によるFeの影か?)、切断面を詳細に調べると、黄銅鉱と密接に伴うインジウム銅鉱の鋼灰色粒状集合が確認できた(矢印部、写真⑤,⑥)。智恵門脈群では,主としてⅡ期(Cu-Pb)、Ⅲ期(Sn-W)鉱化作用が観察さむれ、Inは,Ⅲ期の鉱液或いは生成鉱石から, まず黄銅鉱に取り込まれ, 鉱石の生成後の過程で,閃亜鉛鉱に再配分されたとされ、黄銅鉱脈中では閃亜鉛鉱の影響を受けずそのまま残ったのであろう。
まず鉱山で頂戴したインジウム銅鉱とされる標本(写真①,②,③)を紹介しよう。
黄銅鉱切断標本は、母岩と石英脈中の黄銅鉱(磁性がありキューバ鉱の可能性も)の状態が良く分かり、インジウム銅鉱(以下In銅鉱と略称)の影響と考えられる黄銅鉱の変色現象もみられる。
一方、切断面左右の破面では、黄銅鉱の色調に違いがあり、写真①右(矢印)側は赤褐色味が強い。
【寄稿】坂本憲仁(BS45)