趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第44話】磁鉄鉱

「楽石庵閑話」~【第44話】磁鉄鉱

我国の製鉄用鉄鉱石は全量輸入され、現在その約60%が豪州産とされているが、s30年代までは輸入80%、国産鉄鉱石が20%程度で、国産鉄鉱石もそれなりに存在感があった。当時の国産鉄鉱石の内訳は、磁鉄鉱40%、褐鉄鉱(沈殿性鉱床)40%、砂鉄20%で、今回は著名接触鉱床産の磁鉄鉱を紹介しよう。

なお現在ブラジル在住の黒瀬先輩は、ブラジルミナスジェライス州の鉄鉱床開発と日本への輸出を、当時の八幡製鉄と共同で成功させたことで知られている。

(1)釜石鉱山新山鉱床

本鉱山の鉄・銅鉱床は、北上山地古生代石灰岩と花崗岩類及び閃緑岩・玢岩との接触部の標式的接触交代鉱床とされ、我国最大規模の鉄鉱床であった。本鉱山産の扁平磁鉄鉱(二枚目)は、文献では「{ⅠⅠⅠ}上に極めて顕著な裂開が発達し、「銀白色に輝き鱗の集合体として一見雲母鉄鉱を思わせる」とあり特異な外観である。

(2)赤金鉱山宝住鉱床

本鉱山は釜石・八茎両鉱山と共に、所謂釜石型の代表的な高温交代銅鉄鉱床として知られる。鉱床は花崗斑岩体に狭まれた上部米里層中の石灰岩が交代されたもので、スカルン帯中の塊状銅鉄鉱床である。

宝住鉱床はs30年代末に坑外試錐により発見され、s40年代から閉山まで栄鉱床と共に主力坑として採掘された。鉱床は石灰岩が交代された磁鉄鉱(三枚目)或いは磁鉄鉱を含む含銅磁硫鉄鉱(四枚目)よりなる塊状鉱体と、岩株状石英斑岩中の銅鉱染鉱体で構成され、微量の金・銀・Bi鉱物を含むことで知られていた。

(3)秩父鉱山道伸窪・大黒鉱床

道伸窪鉱床はs33・34年に実施された磁探及び電探で大規模な異状帯が確認され、s35年の試錐探鉱で磁鉄鉱鉱床に着鉱し戦後発見された最大の磁鉄鉱鉱床とされる。鉱床は早期塊状鉱床で、下盤側の石英閃緑岩と上盤側の石灰岩の間に典型的な累帯構造を形成している。大黒鉱床下部では、石英閃緑岩と石灰岩に接して大規模な磁鉄鉱鉱床を形成し、磁鉄鉱(六枚目)は細脈状の黄鉄鉱や黄銅鉱により、それと接する部分が赤鉄鉱に変化するマルタイト化(martitization)と関係する鉱化作用(正路 1969)を示すと云われる特異な産状である。

(4)山宝鉱山吉木鉱床

本鉱床は二畳系中の石灰岩を交代した接触交代鉱床で、磁鉄鉱及び黄銅鉱を稼行対像とし、磁鉄鉱を主とする第1鉱体と磁硫鉄鉱を主とする第2鉱体との二つに分けられる。磁鉄鉱は自形乃至半自形の粗粒結晶として産するが(七枚目)、柘榴石スカルン中の磁鉄鉱(八枚目)は自然蒼鉛等を含み、不詳含錫鉱物の混入は鉄鉱石として品質上の問題となっていた。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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