趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第26話】古遠部鉱山産ベテフチン鉱

「楽石庵閑話」~【第26話】古遠部鉱山産ベテフチン鉱

日本産新鉱物古遠部鉱で知られる古遠部鉱山は、含金銀黒鉱が特徴とされ様々な銀鉱物が見出されている。また相内玄武岩による熱変成作用により、黒鉱としては珍しい磁鉄鉱を産している。含金銀黒鉱の研究に注力された金床講座の松隈教授は、採鉱・鉱山地質学科の学生にはお馴染みだったが、鉱物学的研究以外に黒鉱鉱山の採算性に対する含金銀黒鉱の重要性と稼行上の対応にも言及されている。

さて古遠部鉱山からはベテフチン鉱[Cu10(Fe、Pb)S6]と云う稀産鉱物を産しているが、同鉱については松隈教授が日鉱誌/85「含金銀鉱石と鉱物について」で「古遠部鉱山には鉄石英・重晶石帯中に一部磁鉄鉱を伴う斑銅鉱・輝銅鉱・etechtlnite・方鉛鉱よりなる特異な鉱石を産する・・・」と記述している。本鉱山産の鉄石英は有名で、鉱山で作った観賞用の赤玉石みたいな標本を入手できたが、台座部分切断面の奇妙な鉱物模様に気付いていた。その後K店で同様の切断標本を見つけ、同じ試料から切断されたベテフチン鉱と分かり即購入した。恐らく誰かが研究用試料として採集・切断し、切断標本は研究後市場へ流れて、一方、残った部分が赤玉石として鑑賞用に残されたのであろう。奇妙なご縁で二つの標本は、数十年を経て出会い現在楽石庵に収まっている。

【赤玉石標本】

鉄石英の表面は鮮やかな赤鉄鉱で、面白い鑑賞石となっている。切断面(下段)には、中心部の鉄石英(黒灰色部)を囲んで、黄銅鉱その他鉱物が帯状構造を成している。

【切断標本】

一部角礫状を成す黄銅鉱と、帯状の方鉛鉱・ベテフチン鉱がみられる。外周部は赤鉄鉱である。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加