趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第5話】石原博士とモリブデン鉱床

「楽石庵閑話」~【第5話】石原博士とモリブデン鉱床

本年3月に国際的にも有名な鉱床学者石原舜三博士が逝去された。博士は花崗岩帯磁率の違いを基に、西南日本内帯の花崗岩を山陽‐苗木帯(領家帯)のチタン鉄鉱系列と山陰-白川帯の磁鉄鉱系花崗岩とに分け、その違いを詳細に研究された。特に山陽‐苗木帯ではタングステン鉱化作用、山陰-白川帯ではモリブデン鉱化作用が卓越と云った鉱床生成条件の違いは、鉱物マニアにとっても興味深い理論であった。

さてMo鉱化作用による輝水鉛鉱は各地で産出し、日本鉱産誌記載のMo鉱山数は147を数えるが地域的な偏在傾向がみられ、北海道・四国・九州には殆ど分布しない。逆に岐阜(21)・島根(15)は非常に多く、有力鉱山はこの地域に集中している。地調報告を引用すると「Mo鉱床は沈殿金属量から考察して、その97%が西南日本内帯に集中」とされ、特に島根県東部と岐阜県白川地域に濃集し、鉱化作用を決める地質環境(花崗岩類)が近似する。

一般に輝水鉛鉱は殆どが石英中に含まれ、随伴鉱物も余りない特徴のない産状が多いのであるが、幸いな事に産出標本の大半が①岐阜県平瀬鉱山(紙を積み上げた様な台形結晶)②島根県小馬木鉱山(花弁の様な結晶)③京都府仏性寺鉱山(盤際の平行脈とこれから中央へ延びる脈)で其々特徴があり、これらは判別が容易である。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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