趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第14話】石膏

「楽石庵閑話」~【第14話】石膏

黒鉱鉱床からは石膏・重晶石と云った硫酸塩鉱物を大量に産するが、硫黄同位体比や水素・酸素同位体分析よる研究では、石膏帯は鉱床形成の初期段階で海水と母岩の火成岩との反応で形成されると考えられた。

しかしその後、海嶺・背弧海盆の海底熱水性鉱床のマウンド下に大量の硬石膏が発見され、黒鉱鉱床に産出する硬石膏とのSr同位体比やコンドライト規格希土類元素パターンについての比較研究が進み、①硬石膏のSr同位体比は、中新世海水と黒鉱鉱床地域の火成岩の中間値を持つ ②一部の硬石膏は正のEu異常を持ち、熱水の希土類元素の特徴が反映されている 等が明らかとなった。この結果、黒鉱鉱床の石膏帯は海水と熱水(黒鉱地域の火成岩と海水との相互作用により生成)の混合により、生成されたものと考えられるようになってきた(小川、鹿園他 2004)。

各地の黒鉱型石膏鉱床からの標本を紹介するが、山陰帯黒鉱型の鵜峠鉱山から産出する天青石(SrSO4)の存在は、その生成条件を改めて研究する価値があると思われる。またかつて「脈状黒鉱鉱床」と云う考え方が提唱され、尾去沢では浅熱水鉱床上部に石膏鉱体がみられ注目された。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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