趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第62話】佐渡相川鉱山
本年7月、世界遺産委員会にて「佐渡島の金山」が世界文化遺産に登録されたことはまことに目出度い。
本鉱山は江戸時代から本邦随一の金山として知られ、総産出量は金 78 t、銀 2,330 tと云われる。文化遺産登録時には、例によって半島出身者の労働環境にイチャモンがついたが、江戸時代には水替え人足として江戸の無宿人が送られ、過酷な水替え作業はこの世の地獄と恐れられた歴史がある。松本清張の短編小説に「逃亡」と「佐渡流人行」の二作品が知られ、「無宿人別帳」として映画化もされている。
さて長年の採掘で鉱脈の枯渇により、昭和27年に稼行体制は大幅縮小され、残鉱処理で含金珪酸鉱を直島精錬所に送っていた。しかし36年からの試錐探査で乙断層先に東大立脈(東青盤脈)が発見され、44年から本格的な採掘が再開されたが、これも尽きて平成元年ついに閉山している。
本鉱山は多数の含金銀石英脈からなり、中新世相川層群の火山岩と砕屑岩類を母岩とし、断層とそれに伴う裂罅に規制された浅熱水性裂罅充填石英脈である。主要鉱脈である大立脈と青盤脈は、平行断層を挟んで東西に延び乙断層で切られている。
残された金銀鉱石標本は東大立脈採掘時のものが多く、今回は東青盤脈産の金銀鉱を紹介しよう。
(1)本標本は乳白色石英の高品位部で銀黒脈(二枚目)を伴い、切断面には角礫状を示す部分もある(文献ではこの鉱脈部分の石英から、透明~半透明石英:Au1~2gr/t、銀黒を含む乳白色石英:40gr/tとの記録がある)自然金も含むとされるが、石英中には黄銅鉱が斑状にみられるだけで(三枚目)、自然金は確認出来ない。
(2)これも分析のため鉱山で切断されており、細い銀黒脈が縞状に多数含まれ、銀黒中には鉱物名不詳の銀鉱物が見られる(三枚目)。銀黒中に微細な自然金粒を含むとされるが、残念ながらこれも確認は出来ない。
(3)産出脈等不明だが保管されていた古い標本で、馬糞金状の微粒と稍赤味ある自然金粒が多数含まれている。
【寄稿】坂本憲仁(BS45)