趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第15話】重晶石

「楽石庵閑話」~【第15話】重晶石

前回紹介の石膏と並び黒鉱鉱床を特徴づける重晶石は全国の黒鉱型鉱床から産出するが、大規模な鉱床は北鹿及び北海道南西部にみられる。例えば道南には重要な重晶石鉱床が分布し、特に南白老鉱山は大規模な黒鉱型塊状鉱床として知られ、黒鉱型重晶石鉱床の成因が研究されている。また黒鉱型以外に、浅熱水性鉱床の勝山・小樽松倉鉱山が有名である。

本鉱床産重晶石の諸特性は北鹿地域の黒鉱鉱床とほぼ同様の値を示すが、黒鉱鉱床に伴う重晶石中の硫黄と酸素は、熱水溶液と海水の混合の際の海水由来の硫酸イオンとされる(鹿園 1983)。本鉱床で採掘された重晶石総量は21万トンに達し、これに必要な膨大なBaイオンを海水からのみ抽出し鉱床を形成させるメカニズムは考え難い。即ち海水以外のBa供給源として、母岩がリーチングを受けて形成された鉱床下盤粘土変質帯・鉱化帯の調査により、母岩に含まれるBaが主な供給源と考えられている(丸茂他 1993)。

また秋田県の玉川温泉(有名な北投石)や川原毛温泉から温泉沈殿物として産出する含鉛重晶石も、この地域の地下にバリウムや鉛に富んだ母岩の存在を示唆しており興味深い。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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