「楽石庵閑話」~【第32話】ハネコミ
昨年度は資源地質学会(会長 五味篤GS52)第70 回年会学術講演会が開催され、鉱山学部卒業生として誠に目出たい。この中で特に興味ある講演は、S-07 「Re-Os放射壊変系を利用した別子型鉱床の年代決定」で、2014年に日立鉱床の生成年代がカンブリア紀にまで遡り列島最古の鉱床と発表されてから、別子型鉱床(層状含銅硫化鉄鉱床或いはキースラガー鉱床等々様々な名称が用いられ、最盛期のS26年の稼行鉱山数は54鉱山に達した)に対する認識がさらに深まったようだ。別子型鉱床は西日本外帯特に三波川帯に集中し、付加体の堆積岩類や塩基性岩中に層状又はレンズ状に胚胎するが、低温高圧の激しい動力変成を受け褶曲構造等の特徴ある産状を示す。特に「ハネコミ」と称する富鉱部は、色々な稀産鉱物を産したことでも知られるが、切羽で実物を眼にする機会は少なく、鉱石によく見られた褶曲模様と坑内作業者の持っていたハネコミ標本を紹介しよう。
【別子鉱山産】
含銅硫化鉄鉱石(黄鉄鉱)にみられる褶曲構造で、石英を伴う磁鉄鉱の褶曲模様。
【伊予鉱山産】
片岩類の層理の彎曲部に胚胎するバラ輝石・磁鉄鉱・黄鉄鉱が見せる複雑な褶曲模様。
【佐々連鉱山金泉脈産】
褶曲部にみられる母岩と平行なハネコミ部で、自然銀を伴う斑銅鉱富鉱部。
【佐々連鉱山金泉脈産】
黄銅鉱富鉱部で黄鉄鉱に微量含まれる成分が絞り出されカロール鉱(Cu(Co,Ni)2S4)を生成。
【寄稿】坂本憲仁(BS45)