趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第35話】奥天竜のキースラガー鉱床と奥三河の鉱山

「楽石庵閑話」~【第35話】奥天竜のキースラガー鉱床と

奥三河の鉱山

紀伊半島を横断して西から伸びてきた中央構造線が方向を変え、三河と遠州の境界沿いに北東に伊那方面へさらに伸びている。中央構造線西側は主に領家変成帯とこれを被う中新世火山岩類が広く分布し鉱物産地として有名な鉱山が幾つか知られる。一方、東側は三波川変成帯の泥質片岩等の緑色片岩が南北方向に帯状に分布し、多くのキースラガー鉱床が稼行された。今回はこの両地域の代表的鉱山を取り上げる。

■奥三河の著名鉱山■

津具鉱山は戦国時代武田氏により金山として採掘された古い歴史をもち、輝安鉱の美晶でも知られ、田口鉱山は美しいパイロクスマンガン石結晶で海外にも知られた。そして新鉱物中宇利石の発見で有名となった中宇利鉱山(戦時中銅山として稼行された)を紹介する。

【津具鉱山】

第三紀火山活動に伴う浅熱水性鉱脈で、自然金や辰砂・Sb鉱物類等種々の鉱物を産した。

本標本は、輝安鉱結晶に伴う辰砂。

【田口鉱山】

鉱床は領家変成帯の塊状珪岩と黒雲母片麻岩との間の層状鉱床で熱変成作用を受けている。

本標本はパイロックスマンガン石の結晶群。

【中宇利鉱山】

秩父帯と三波川帯境界部の蛇紋岩中の銅-鉄-Ni鉱床で、ヒーズルウッド鉱の産出でも有名。

本標本は磁鉄鉱にデュルレ鉱を伴う。

■奥天竜のキースラガー鉱山■

この地域を代表する久根鉱山(古河鉱業)、名合鉱山(同)そして峰之沢鉱山(日本鉱業)の鉱石を紹介する。いずれも黄鉄鉱を主体とする含銅硫化鉄鉱だが、鉱物標本としては面白味に欠ける。

【久根鉱山】

久根層黒色片岩中の緻密塊状鉱で黄銅鉱と磁硫鉄鉱を含む。

【名合鉱山】

三波川緑色片岩中の珪質ガリ鉱で細かい磁鉄鉱を含む。

【峰之沢鉱山】

名合層緑色片岩中の動力変成を受けた珪質縞状ガリ鉱。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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