趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第4話】兼平先生と飯盛鉱山

「楽石庵閑話」~【第4話】兼平先生と飯盛鉱山

含銅硫化鉄鉱鉱石は鉱物マニアには人気がなく、以前某標本店で山積み状態で売りに出されていた。その中から拾い出したのが、この飯盛鉱山産の磁鉄鉱標本である。これには鉱床学者兼平慶一郎博士の自筆標本ラベルが付いており誠に由緒正しい標本だが、先生が千葉大へ移った後大学では無情にもゴミとして処分している。

先生は飯盛鉱山等の多くの研究を通して含銅硫化鉄鉱床が同成鉱床である事を証明し、例えば鉱山地質誌特別号第4号に掲載の論文(海底火山活動とキースラーガーの生成)でその内容を知ることが出来る。

茶道具等の骨董品では道具の良し悪しは当然として、箱書・折紙と云ったその由緒を示すものが重視されるが、国産の古い銘柄標本でも骨董品並みの扱いが必要な時代で、本標本はまさにその好例と思っている。

含銅硫化鉄鉱中の磁鉄鉱は各地で中々面白い産状を示すのであるが、有名な別子鉱山産では三枚目写真の如く見事な褶曲構造がみられて興味は尽きない。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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