「楽石庵閑話」~【第11話】花岡鉱山松峰鉱床の黒鉱
令和3年の年始投稿は黒鉱の話題を。S42年何とか学部へ進級し、5月に採鉱学科と鉱山地質科合同で前年本格稼働を始めたばかりの花岡鉱山松峰坑へ見学入坑した。
大森山山腹に新設された諸設備(写真上「日本鉱業会誌採掘特集号1967年より」)と坑口は従来の鉱山のイメージを一新し、坑内は採鉱技術の土木技術化を象徴するものであった。採掘法は黒鉱の標準採掘法となった人工天盤による下向充填採掘法で、短時間の切羽見学中に採集した黒鉱鉱石は今でも標本箱に鎮座している。これは(狭義の)黒鉱と云われるもので、銅藍と重晶石の微細な結晶がみられる。
さて黒鉱鉱床の起源は、北鹿の大型鉱床の研究と世界各地の海底噴気・熱水鉱床の発見で、長年にわたる交代説と同生説の成因論論争に終止符がうたれた。また現在みられる鉱床の累帯構造は、海底面に噴出した初生黒鉱が低→高→低温と変化した熱水系により変質作用を受けて形成したとされ、これに関連した豊富な鉱物を産出する。松峰鉱床からは斑銅鉱が特徴的にみられ、黄銅鉱を主体とする黄鉱富鉱部で熱水中のS2増大により斑銅鉱が低温生成したとされる。今回紹介する松峰産黄鉱中の斑銅鉱は、熱水による二次的な銅富化作用による斑銅鉱生成を示す典型的な産状である。
【寄稿】坂本憲仁(BS45)