「楽石庵閑話」~【第8話】生野鉱山の銀鉱石
生野鉱山はs48年に閉山後、近年は産業遺産として跡地や街並が整備され、江戸時代石見銀山と並ぶ公儀直轄の銀山から、明治以降三菱による近代化の鉱山史が分かる史跡となっている。
本鉱山は典型的なXenothermal鉱床として明瞭な鉱石の帯状配列を示し、鉱床の中心から外方へSn-Cu 帯・Sn-Cu-Zn 帯・Zn 帯・Pb-Zn 帯・Au-Ag 帯・不毛帯のゾーニングを持つ。また数多くの鉱物、特に桜井鉱・ペトラック鉱・生野鉱と云った新鉱物を産して鉱物マニアにとって聖地であった。残念ながら私が訪れたs40年代は、富鉱部は掘り尽されて往時の盛況は偲ぶべくもなく、僅かに粘土断層で分断された大丸分岐脈の小日向ひで閃亜鉛鉱に伴う含銀鉱石を運よく採取できた。
幸い古い収集家の遺品が近年市場に放出されて、主力の金香瀬鉱床産銀鉱石の魅力を知る事が出来る。
- 小日向ヒ産含銀鉱石で、脆銀鉱を含み矢印部分に自然銀が付く
- 同自然銀部分の拡大写真
- 明治時代産出の旧久保田標本で、濃紅銀鉱の結晶が空隙部にみられる
- 同濃紅銀鉱の拡大写真
- 新庄元佐渡鉱山長旧蔵の淡紅銀鉱、古典的標本として知られる
- 同淡紅銀鉱の拡大写真で、ルビー色は写真では再現出来ない
【寄稿】坂本憲仁(BS45)