「楽石庵閑話」~【第28話】幌別鉱~新鉱物物語
日本産新鉱物は毎年各地で発見・記載され、昨年も桐生石 NaMnAl(PO4)F3 が発表されている。一方で我国を代表するような大鉱山(例えば別子、足尾、花岡等)からは残念ながら記載がなく、数年前に日立鉱山産の古い鉱石標本を調べて「日立鉱」が発見され話題となった。また発表後に取り消される事例も多く、今回はそんな話題を取り上げよう。
幌別(硫黄)鉱山はかつて本邦最大の硫黄鉱山として栄えたが、S48年に回収硫黄の拡大で閉山している。
鉱床は主として黒色凝灰角礫岩の下部に接する安山岩熔岩流上部を鉱染交代したもので、15〜25mの扁平楕円形を呈し、旧鉱床と新鉱床とに大別され、新鉱床はさらに硫黃鉱体と硫化鉱体とに分けている。
さて幌別鉱は新鉱床硫化鉱体中より産し、S23年に新鉱物として早瀨喜太郎氏により命名され、輝蒼鉛鉱と輝安鉱との中間相(Bi2S3-Sb2S3)とされたが、現在は独立種としては否定されている。本標本は長さ1.5mm、幅0.2mm程度の一見輝安鉱樣の針狀結晶で、自然硫黄を伴い黒色硫化鉱中に散在する。
黒色の硫化鉱中に自然硫黄(右写真)を伴っている。
拡大写真では、微細な「幌別鉱」の針状結晶が良く分かり、その他様々な不詳鉱物がみられる。
【寄稿】坂本憲仁(BS45)