趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第30話】明延鉱~新鉱物物語Ⅱ

「楽石庵閑話」~【第30話】明延鉱~新鉱物物語Ⅱ

第28話に続き新鉱物になり損ねた話題を。三菱金属鉱業(株)の明延と生野鉱山は、兵庫県内で歴史ある名門鉱山として稼行していたが、生野はS40年代半ばには既に鉱脈が尽きて残鉱処理に近い状態であった。一方で明延はなお積極的に新鉱脈開発に取り組み、西部地区でS41年に富士野脈に着脈しさらに下部の探査を積極的に進めていた(後の智恵門脈)。そんな状況下生野では、S34年に生野鉱、S40年に有名な桜井鉱が発表され研究者の注目を集めていた。しかし明延からはそんなニュースは聞かれず、新鉱床探査に必死で取り組んでいた明延の方々は、新鉱物には余り関心がないのかと思っていた。ところが明延訪問時に、事務所で分析担当者から「新鉱物の可能性があり、名前は明延鉱!・・・」と聞かされて頂戴した奇妙な標本が手元にある。

まず生野鉱山で発見された日本産新鉱物を紹介するが、いずれも金香瀬鉱床千珠本ピ産である。ペトラック鉱は、外国人のみにより発見・記載(1987年)された日本産新鉱物として知られ、桜井鉱や含インジュウム黄錫鉱と似た組成を持つが、その結晶構造が異なるとされる稀産鉱物である。

【生野鉱:Bi4(S、Se)3】自然蒼鉛に伴い矢印部にみられる。

【桜井鉱;(Cu,Fe,Zn)3(In,Sn)S4】閃亜鉛鉱・黄錫鉱と縞状なし矢印部。

【ペトラック鉱:(Cu,Fe,Zn)2(In,Sn)S4】含 In 閃亜鉛鉱中の矢印部付近。

続いて「明延鉱」と云われた標本、これは細かい石英を伴う黒色の硫化鉱物の塊で、特有の色調を呈する斑銅鉱と銀~鋼灰色の恐らく四面銅鉱が密雑に混ざり、明延産鉱石としては一風変わった外観である。当時は余り興味がなかったので産出名や鉱物の詳細は忘れてしまったが、何か夢のある話であろう。当時の事情を知る方がお見えになったら、何かご教示頂ければ幸いです(なお対外的発表は一切なかったようで、検索しても何も分からない)。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

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