「楽石庵閑話」~【第53話】佐々連鉱山のハネコミ鉱石と資料
別子型鉱床の特異な富鉱部とされる「ハネコミ」については、既に第32話で鉱石標本を紹介している。さて今年8月の名古屋ミネラルショーに、佐々連鉱山に閉山までお勤めで「ハネコミ」鉱石を在職中に集められたと云うTサン(北光会ではなく北大出身)が出展され、終活として種々の鉱石標本を販売された。出展ブースには、標本以外に「ハネコミ」や佐々連鉱山に関する資料も並べられ、「ハネコミ」の成因等も分かり易く説明されて多くの客が集まっていた。最近Tサンから追加の同鉱山関連資料を送って頂いたので纏めて紹介しよう。
1.鉱山関係資料
鉱山関係者の思いがこもった、半世紀近い昔の関連資料である。
2.ハネコミ鉱石
今回入手のハネコミ関連鉱石標本で、これらは通常見学で入坑しても切羽で採集は無論、見ることも困難な貴重な標本である。ハネコミは鉱石の分岐現象で、母岩との関係で褶曲部にみられる褶曲型と、母岩の褶曲部とは一見無関係に生じている裂罅型の二つに区別され、通常銅の富鉱部を成す。
かつて銅山川一帯には、別子鉱山の本鉱床・余慶・筏津・積善の各鉱床が並び、日鉱白滝そして伊予三島側に佐々連鉱山と、数多くの三波川変成帯中の別子型銅鉱床が採掘され、恐らく多くの北光会会員諸氏が鉱山で働いていたと思われる。しかし各鉱山とも閉山から年月が経ち、四国支部にはどれだけ関係者がご存命なんだろう・・・。現在残された貴重な関係資料が、大切に後世に伝えられることを祈念するばかりである。
【寄稿】坂本憲仁(BS45)