趣味の話題 ~「楽石庵閑話」~【第12話】黒鉱鉱床の珪鉱帯

「楽石庵閑話」~【第12話】黒鉱鉱床の珪鉱帯

黒鉱鉱床は中新世の特定層準に胚胎された珪長質の海底火山活動に伴う海底噴気熱水鉱床で、主に日本海側のグリンタフ地域に分布する。また下部から珪鉱→黄鉱→黒鉱→重晶石(或いは鉄石英)と累帯構造を持ち、この成因は、熱水鉱液の温度変化に伴う熱水中のCu・Zn・Pbイオンの分解・沈澱により形成されるとの説が有力だ(島崎博士の「日々雑感」に詳しい)。また珪鉱帯は、熱水鉱液が海底に達する前に海底よりも下位で生じた鉱液流路にあたるとみなされる。下部珪鉱は小坂鉱山内の岱鉱床で典型的な鉱石を産し、一見浅熱水鉱脈産だが母岩の変質状態に特徴がみられる。

また鉱床周辺には母岩として元山角礫岩が分布し、下部珪鉱に接して角礫を含む角礫質黒鉱が知られ、元山露天掘り跡では典型的な角礫鉱がみられた。

さて小坂鉱山での珪鉱の定義はCu≧1.0%、低品位珪鉱で0.5%≦Cu≺1.0%とされたが、元山坑ではs35年繰り返し散水によるLeaching設備が完成し、Cu品位0.3%以下の低品位鉱体からの銅回収がs53年まで続けられた。現在では黒鉱採掘時の面影は何も残っておらず、リサイクル工場が稼働している。

【寄稿】坂本憲仁(BS45)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加